(2)コペンハーゲン解釈

●コペンハーゲン解釈は、1920年代に、ボーア、ハイゼンベルクらが主張した量子力学におけるもっとも標準的な解釈です。もっとも、ボーアとハイゼンベルクとの理解にはかなりの相違があると言われています。ここでは、コペンハーゲン解釈を、一応、波の性質(非局所性)をもつ量子が粒子(局在性)として確定(定在化)する過程を、「波束の収縮」または「波動関数の収縮」として捉える立場と定義しておきます。「波束の収縮」とは、確率の波として空間的に広がっていた電子などが、観測(測定)を行った瞬間に、その位置が一点に確定することを述べたものです。すなわち、「観測行為」が「波束の収縮」を引き起こすのです。

●コペンハーゲン解釈については、ノイマンが1932年に行った定式化が分かりやすいと思います。

①観測される系(量子系)と観測者とを分ける。両者の境界は任意である。
②観測される系(量子系)の状態は、観測していないときはシュレーディンガー方程式に従う。
③観測により波動関数が収縮して、1つの測定値が得られる。

*J.v.ノイマン(井上健ほか訳)『量子力学の数学的基礎』(みすず書房、1957年)334頁。

●この際、問題となるのは、「観測」をどの段階に設定するかです。観測を「測定装置」とする立場と「観測者」とする立場があります。「測定装置」に設定すると、観測とは、観測される量子と測定装置との相互作用と考えられます。「観測者」に設定すると、観測は、「人間の意識」の方に近づいていきます。この点は、コペンハーゲン解釈では必ずしも明確ではありません。

【多世界解釈】

●コペンハーゲン解釈に対して、1957年に、ヒュー・エヴェレット3世(1930-1982)によって提唱された考え方が多世界解釈です。

●エヴェレットは、「波束の収縮」のない量子論の定式化を目指して、観測対象である量子も測定機器も観測者も含めた複合系を想定し、その系が観測によって分岐し、分岐した系はそれぞれが現実であるという考え方を示しました。この考え方はその後改良が加えられ、「多世界解釈」と呼ばれるようになりました。

●コペンハーゲン解釈と対比した場合、多世界解釈には以下の特徴があります。

①観測される量子系、測定装置、そして観測者自身も単一のシュレーディンガーの波(状態ベクトル)の一部として、シュレーディンガー方程式に従い決定論的に推移していく。

②観測するたびに宇宙が分岐する。「スリットAを通る世界」と「スリットBを通る世界」の両方が存在する。観測される量子系も測定装置も観測者もそれぞれの世界に分岐する。

③よって、観測によって波動関数が収縮することはない。

●多世界解釈は、コペンハーゲン解釈に対立する考え方とされていますが、観測のたびに世界が分岐するとしますと、世界を分岐させる「観測」とは何でしょうか。多世界解釈は、「波束の収縮」を「世界の分岐」に変えてはいますが、「観測とは何か」という問題は残るように思います。

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