(6)量子もつれ(EPR相関)

●2022年のノーベル物理学賞は、フランスのアラン・アスペ、アメリカのジョン・クラウザー、オーストリアのアントン・ツァイリンガーの3人に贈られました。3人の主たる授賞理由は、ベルの不等式に基づいて、EPRパラドックスの真偽を実験によって確かめたことです。

●実験の内容について、アラン・アスペの実験で説明します。アスペは光子の「偏光」と呼ばれる性質を利用しました。偏光とは、サングラスに用いられている原理で、限られた方向にだけ振動する光の波のことを言います。アスペは、全体の偏光状態がゼロであるカルシウム原子から、まったく逆方向に相関する2つの光子を放出させました。それぞれの偏光状態を測定しますと、光子Aが横方向に偏光していれば、光子Bは必ず縦方向に偏光します。もともとの偏光状態がゼロですから、そこから放出される相関した光子についても両方の偏光状態を合わせるとゼロになるのです。

●その結果は、ベルの不等式が破られていること、すなわちアインシュタインの期待に反し、「幽霊のような遠隔操作」が確認されたのです。ジョン・クラウザー、アントン・ツァイリンガーの実験でも結果は同じでした。

●ベルの不等式に基づくこれらの実験結果から、量子は、観測を行う前にはその状態が定まっておらず(重ね合わせの状態にあり)、観測を行うことによってその状態が確定することが証明されました。

●また、これらの実験は、もうひとつこれまでの物理学に反する重要な事実を示しています。それは、光子Aに対する観測が、「光速度を超えて」、光子Bの状態を確定させたという点です。特殊相対性原理によれば、この宇宙には光速度以上の高速で伝達される物理作用はありません。アスペらの実験は、光子Aに対する観測が、瞬時に(光速度を超えて)、光子Bに影響を与えたことを明らかとしたのです。

●以上の実験結果は、一般に、量子もつれ(quantum entanglement)と呼ばれています。しかし、名称としては、EPRパラドックスに対する解答ですから、「EPR相関」が相応しいと思われます。

☞(7)まとめ—量子を「観測する」ことと量子が「存在する」こととは同じことである―

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